ジェネシス(創世記)
を卒業し、イゼスは両親の手から離れる時がきた。神官たちの居住する荒れ野の山奥で、修行することになった。

そこではセイ派の人達が、俗世間から隔絶した生活を過ごしていた。自給自足で、文明とは無縁の場所だ。月に一回だけ、近隣の町へ行商及び買い出し並びに布教活動に行くだけだった。

 イゼスに異変が見られた。ユダの戒律を平然と破る態度が、多々あった。司祭者たちはそれをしかったが、イゼスの雄弁さに舌を巻かれ逆に切り返されてしまった。

 司祭者たちは、イゼスを連れて諸国を漫遊した。ユダ人にかかわりのある国、都市、山、川、戦場、土地などだ。その場所を見学させて、ユダの歴史を学ばせた。

 イゼスに魔術を教えた。ヨルダン川でイゼスは、引き潮の時を見計らって岩畳みの上を歩いた。それは水面上を歩く、空中浮遊に見えたはずだ。

その他にも、手と手の間で物体を浮遊させる魔術。物体の瞬間移動。まさに、神の御業のようだ。

 物体や人を消す、または出現させる魔術。帽子からハトを出す魔術。水からワインにすり替える魔術。大きな箱に入って、自分の身体を二つに切断する魔術。静電気を使って、油に火をつける魔術。トランプやコインの魔術などを学んだ。

 これらの魔術を民の前で披露すれば、「主」が行った奇跡だと信じるに違いない。イゼスを「神の子」として、民たちをだますことができる。

しかし本当の「奇跡」とは、一歩踏み出す勇気のことを言う。「神の力」など、関係ない。

 イゼスは、ケシからアヘンの作り方を学んだ。青カビからペニシリン(抗生物質)を抽出する、研究もした。リヤの人口呼吸法も学び、危篤状態の患者を回復させた。整体技術を習得し、腰痛・肩凝りを治癒した。これで、多くの人の病を治療することができる。

 美しくて魅惑的な女性教師が、イゼスに問題を提出し解かせた。いかなる難問にも、素早く解答・対応できるようにするためだ。その難解さゆえに、イゼスはその女性を悪魔のようにののしった。若いイゼスにとって、その誘惑に耐えるのは大変だったのに違いない。

「私は求めない。主を試すようなことはしない(イザヤ書七)」
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