ジェネシス(創世記)
紀元前六年、ヨネもイゼスと同じ時期に生まれた。ヨネの母親ベトとイゼスの母親マリーとは、従兄弟同士だった。神官たちはベトに、生む前からヨネを「洗礼者」にすることを命じていた。

 神官たちの唯一の不安は、生まれた子供が、二人とも女性だったらどうすべきかだった。駄目もとで、男女の生み分け方法を教えた。幸いにも、二人とも男性だったので喜んだ。

 二人は、生まれた時からお互いの宿命を理解する必要性があった。同じセイ派ではあるが、二人に教育を施したのは、別の司祭者であり別の土地だった。

それまでは、お互いに名前と役割は知っていたが、顔を合わせたのは幼少期に二~三回だけだった。

「私は、その履物をお脱がせする値打ちもない(マタイによる福音書三)」

 ヨネは、イゼスに洗礼を施した後、アンテ大王に捕らわれた。罪名はどうにでも作れる。悪徳な洗礼者は、大金を持参した者だけに、豪華な室内で身体を清めさせていた。

けれどもヨネは、貧者を相手に川の水で洗礼を施した。その結果、大勢の信奉者がヨネの前に集まった。サイ派は、そんなヨネの存在が不愉快だったのだ。

 サイ派は、アンテ大王の権力に寄り添っていた。側近として、強い発言力をもっていた。反面アンテ大王は、ユダ人の財産支援を受けていたために、いいなりになっていた。

ヨネは、人の道に外れた行為をしているアンテ大王を痛烈に批判した。ヨネはイゼスに洗礼の施しの役目を終えると、サイ派に斬首されて「死の洗礼」を受けるのであった。


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