ジェネシス(創世記)
遅れて、弟子のヨダが現れた。ヨダがイゼスの頬にキスをすると、ローマ兵がやってきて逮捕されてしまった。

キスが、イゼス本人だという合図だ。サイ派はイゼスの存在を知ってはいたが、顔や容姿を知らなかった。

「真の私を包むこの肉体を犠牲とすることによって、お前は全ての弟子たちを超える存在になる(ユダの福音書)」

 裏切り者のヨダの通報だけが、唯一イゼスを確認できる手段だった。ヨダは、サイ派から銀貨三0枚を受け取ってイゼスを売った。イゼスが逮捕された時、ペロは剣を抜いて、兵士の耳を切り落とした。

「剣を取る者は皆、剣で滅びる(マタイによる福音書二六)」

 弟子ヨダは、イゼスを憎んでいた。イゼスは一方的に、頭ごなしに怒鳴りつけるばかりで、自分の言い分を聞こうとしない。

ましてヨダは、イゼスが国王になると信じてついてきたのに、国王になる気配がない。裏切られたと思ったからだ。

「あなたたちはやがて、人の子が全能の神の右に座り、天の雲に乗って来るのを見る(マタイによる福音書二六)」

< 225 / 375 >

この作品をシェア

pagetop