ジェネシス(創世記)
サイ派の大祭司ファーは、最高法院で「死刑」の決議を下すが、その権限はない。結局、その判断はローマのピト総督のもとへ送られた。

軍隊を作って、ローマに反逆を計画している様子もない。ローマの法律でも、イゼスを死刑にするだけの理由がない。無実は明白だ。結局ピト総督は、たわいもない刑罰で「むち打ちの刑」に処した。

 サイ派は面白くない。次にピト総督は、大衆に決定させることにした。恩赦(国家的な行事により、犯罪者の刑罰を消滅させること)の適用を促した。

エルサレムの大衆は、バーラという男性を恩赦にした。その結果、イゼスの死刑は確定的になってしまった。

 イゼスは、レバノン杉で作られた頑丈で重い十字架を背負い、「悲しみの路地」を歩いて「ゴルゴダの丘」に向かった。

その時弟子たちは皆、自分も逮捕されることを恐れて他人の振りをしていた。弟子のペロは、人に問い詰められると三回も否定した。

 十字架による磔は、古代地中海地方の死刑の道具だ。手のひらにクギを打ち、足首にも打ちつけた。落下を防ぐためにヒモで縛り、足元には台座を置いた。

その激痛は、計り知れないものがあったことであろう。生かしたまま、苦しみ抜いてジワジワと殺す。

 昼、イゼスは丘の上で十字架にかけられた。信者たちは、黙ってイゼスを見守った。母親マリーも、涙ながらに見守った。

他にも二人の罪人が十字架にかけられている。夕方には黒雲がたちこめ、雷鳴がとどろいた。稲妻が神殿の垂れ幕に落ちた。

イゼスは、ダデの詩を復唱した。自分がダデの子孫であることを立証するかのように、叫ぶのであった。

「私の神よ、なぜ私をお見捨てになるのか。口は渇いて素焼きのかけらとなり、舌は上あごにはりつく(詩編二二)」

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