ジェネシス(創世記)
弟子ヨダはその後(ご)、自分の犯した行為を悔やみ、路地裏でだれにも見られる事なく、クビを吊って自殺してしまった。

「お前は、この世代のほかの者たちの非難の的となるだろう。そして、彼らの上に君臨するだろう(ユダの福音書)」。

 三人は、昼間は強い日射しにさらされ、夜は寒さに凍えた。汚物は垂れ流しである。空腹に襲われる。水が恋しい、唇が乾いて割れた。カラスが三人の頭上を飛んでいる。

死ぬのを待っている。手足(てあし)を少しでも動かすと、打たれたクギの刺激で激痛が走った。三人は衰弱しきっている。死は時間の問題だ。

 三日後、十字架から降ろす時がきた。イゼスと一緒に十字架にかけられた二人は、ローマ兵によって両足をオノでたたき折られた。全体重がかかって、息の根を止められた。

 信者であり議員でもあるヨフの請願によって、ローマ兵にイゼスの両足を折らせなかった。生け贄にした子羊は、骨を折らずして肉を食する習慣だったからだ。

骨を傷つけない。イゼスを食べるわけではないが、尊敬すべき死者の遺体を尊重したかったのであろう。この日は四月六日の木曜日、安息日の前日である。

「主はその全てから救い出し、骨の一本も損なわれることのないように、彼を守ってくださる(詩編三四)」

 ローマ兵は死亡を確認するため、イゼスの下腹部をヤリで刺した。ヤリを抜くとそこから、ドロドロとした血が流れでてきた。人類の罪を清めるための、血である。

 アブーが次男イクを、「主」への犠牲としてささげユダ人との間に契約を交わした。そして今、「主」はわが子イゼスを生け贄にすることで、「神と人(信者)」との間に新たな契約を結ぶのであった。

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