ジェネシス(創世記)
政府軍が、私たちの動きを察知したようだ。いや、一0年前から私たちのことを知っていたのだ。完成を待っていた。どうりで、必要物資が容易に届くことができるなと思った。

 ノエルの時代では、大洪水の災いに備えて方舟の建造に着手していた。それを信じなかった民たちは、ノエルを愚か者扱いにしてあざけ笑(わら)った。

 けれども今の時代では、軍事政権の下では、民間人による宇宙船の建造を禁止している。政府軍に見つかった場合、その宇宙船は没収した上にエリート軍人たちが乗る船とされる。下層軍人は乗船できない。

 世界各国では一般市民による、宇宙船の建造計画が進められていた。それが政府軍に摘発され出した。

反抗する者は、裁判を受けることなくその場で射殺された。否、それは政府軍ではなく、下層の軍人によって奪われだした。もう山賊である。

 私たちの方舟も、ねらわれている。こんな大きな宇宙船を隠せるだけのドッグ(船舶などの建造・修理する建物)など、あるはずがない。ましてや、この方舟には戦闘能力はない。単なる飛行客船なのだ。
 

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