ジェネシス(創世記)
第十二章 破棄された契約
第一二章 破棄された契約

「このたびは ぬさもとりあへず 手向山 紅葉の錦 神のまにまに」

慌てて旅に出たため、幣(神様にささげる木綿や紙などを細かく切ったもの)の代わりに手向山(たむけやま)の美しいもみじをもって道祖神にささげた。菅家(菅原道真)。

 二四六六年。ユダ人は、「主」に祈りをささげた。有能な科学者が、「主」の奇跡を期待することに憤りを覚える。ここに救世主などはいない。

試験飛行は終わった。あとは出発日を決定するだけだ。早急に、火星に向けて発進するしかないのだ。

 火星までの中継基地として、一七機の宇宙ステーションがある。「太陽光」を受けて推進する、「ソーラーセール」も装備されている。

しかしそれらの宇宙ステーションは、下層の軍人たちに征圧されてしまった。反乱を企て、政府軍とその家族を皆殺しにしたようだ。私たちが、宇宙空間に飛び立てても、今度は彼らの戦闘機が追ってくる。

 彼らを交わして無事火星にたどりつけても、まだ火星に居住できる環境は整備されていない。私たちを、素直に受け入れてくれる施設はない。

なぜなら、そこには政府軍がすでに住んでいるからだ。離れた場所に、自分たちが居住する施設を、自分たちで建設しなければならない。今さら、そんなことができるはずもない。

 火星に到着することは、死に場所を求めに行くようなものだ。結果的には自殺行為だ。止まるも地獄、進むも地獄、前途多難である。私たちは遊牧民(ヘライ人)のように、宇宙をさまようしか方法はないのであろうか。

「初花や ひと度は死を 遠ざけて(相馬遷子)」

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