ジェネシス(創世記)
間もなく、政府軍の本隊が攻撃を仕掛けてくる。もう、これで私たちはお仕舞いだ。戦闘するだけの武器は、もう持ち合わせていない。

政府軍は戦車部隊に、ヘリ部隊、装甲車輌に乗ってやってきた。ロボットの歩兵部隊が、押し寄せてきた。なによりも、「ニュートリノビーム砲」を車輛に搭載している。

 このニュートリノビームは、物体を貫通しても機械を破壊することはない。これを浴びた人間や生物だけが、確実に死ぬ。人体の七0%は水分で構成されている。

ビームが水分子に反応すると急激に振動し、一瞬にして体内で一00度の沸点に達する。厚い鉛の壁でないと防御できない。そこまで、私は設計していない。これでは皆、焼け死んでしまう。

 電磁波を使用すれば、電気系統に悪影響を与えて宇宙船を破壊してしまうが、このビームは生物だけを殺害する都合の良い殺人兵器だ。

方舟を捨てて、素直に政府軍に手渡し、命だけは助けてもらうか。それとも、戦って潔く死んでいくか。

 インド人の再計算により、出発時刻が決定した。それはメギドの現地時間にして、六月六日午前「七時」だ。それまで、略奪や破壊されないことを祈る。

「冬ハチの 死にどころなく 歩きけり(村上鬼城)」


< 292 / 375 >

この作品をシェア

pagetop