ジェネシス(創世記)
一00年前に出版されたミステリー書籍に、イゼスの子孫が日本の東北地方を訪れたことがある、とその本に書かれていた。

イゼスを研究していた著者は、ユダ人だ。その時、私はその本を読んで笑った。つまり私の体内に、イゼスの遺伝子が流れているというのか。

だからこそ、私は「主」に選ばれたのか。共通点は、「ミトコンドリアDNA」だった。

「天にある証しの、幕屋の神殿が開かれた(ヨハネの黙示録)」

 私は、開かれたドアの向こう側にある祭壇を確認した。「神輿」がある。これが噂に聞いた、聖櫃(アーク)なのか。

模造品にしてはよくできた代物だ。さすが、日本の大工職人だ。腕がいい。石板もどうせ、模造品だろうな。

 フタを開けてみよう。大丈夫か、天罰を受けたりはしないか。ワナを仕掛けていないか。静電気はハケで除去した、これで放電しないはずだ。放射線の検知反応もない。ウイルスも検出されない。安全性は、確認した。

 恐る恐る、触れてみた。何ともない。ゆっくりとフタを開けてみると、その中には、数万個以上の「ナノチップ」が入っていた。

書籍だ、映像だ。やっぱり模造品だ。方舟の図書室のナノチップより、数百倍優れている。

「山路を登りながら、こう考えた(夏目漱石。草枕)」

「財宝」は、どこにある。この数十万個以上のナノチップの一つに、隠し場所があるというのか。どうやって、探しあてる? 途方も無い労力を要する。

 二枚の石板がある。まさか? モズが書き刻んだ、本物の石板だ。素材は玄武岩だ。四000年以上も、風化することなく保存されていたというのか。信じられない。

 この石板を分析した結果、イリジウム(Ir)の含有量が高すぎる。地球上にこれだけの量が存在すると言うことは、「隕石」しかない。

火星から飛来した「隕石」を使って、モズは石板を完成させたのだ。すると、ウイルス付か。消毒はしておこう。


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