ジェネシス(創世記)
私は今、みんなを巻き添えにして自殺を考えている。もう未来を求めない。次女も孫息子もいない。
生きて行く望みが断たれた。個人的な聖書が完成したら、あの「契約の箱」に保管しよう。
私は操縦席に座り、バースディー・ワインを飲みながら、黙って「筋弛緩剤(筋肉をゆるめる薬)」を自分の左腕の静脈に注射するつもりだ。この薬だけは、何とか薬品庫を壊してまで手に入れた。
こんなに火星が近いのに、一歩も足を踏み降ろすことなく生涯を終えてしまうのか。そんな火星を見ながら私は、安らかに永遠の眠りにつく。
モズが「約束の大地、ケイン」の土地に足を踏み入れることなく、丘の上で眺めながら死んで行く、そんな気持ちだ。
自殺。本当にそれでよいのだろうか。一瞬、脳裏を否定的な見解が過った。そうなのだ、私は生後、間もないころ、飛行機事故で唯一生還できた一人なのだ。
母親は、身を犠牲にしてまで私を守ってくれた。正直言って、飛行機は今でも怖い。冷や汗をかき、身が震える。
あの時、まだ他にも生存者がいたらしい。それなのに、私だけが助かった。山の斜面から、飛行機が今にも滑り落ちそうな危険な状況下で、消防庁の「ハイパーレスキュー隊」が私を救ってくれた。私の命と引き換えに、隊員が一人、亡くなった。
つまり私の命を、安易に自分で断つことは許されない。私には自殺する権利などない。助けてくれた彼らのためにも、死ぬことはできない。なぜなら私は、「生きる」使命があるからだ。生きなければならないのだ。
生きて行く望みが断たれた。個人的な聖書が完成したら、あの「契約の箱」に保管しよう。
私は操縦席に座り、バースディー・ワインを飲みながら、黙って「筋弛緩剤(筋肉をゆるめる薬)」を自分の左腕の静脈に注射するつもりだ。この薬だけは、何とか薬品庫を壊してまで手に入れた。
こんなに火星が近いのに、一歩も足を踏み降ろすことなく生涯を終えてしまうのか。そんな火星を見ながら私は、安らかに永遠の眠りにつく。
モズが「約束の大地、ケイン」の土地に足を踏み入れることなく、丘の上で眺めながら死んで行く、そんな気持ちだ。
自殺。本当にそれでよいのだろうか。一瞬、脳裏を否定的な見解が過った。そうなのだ、私は生後、間もないころ、飛行機事故で唯一生還できた一人なのだ。
母親は、身を犠牲にしてまで私を守ってくれた。正直言って、飛行機は今でも怖い。冷や汗をかき、身が震える。
あの時、まだ他にも生存者がいたらしい。それなのに、私だけが助かった。山の斜面から、飛行機が今にも滑り落ちそうな危険な状況下で、消防庁の「ハイパーレスキュー隊」が私を救ってくれた。私の命と引き換えに、隊員が一人、亡くなった。
つまり私の命を、安易に自分で断つことは許されない。私には自殺する権利などない。助けてくれた彼らのためにも、死ぬことはできない。なぜなら私は、「生きる」使命があるからだ。生きなければならないのだ。