ジェネシス（創世記）
もう一つの悪夢とは、私は「主」に選ばれてはいなかった。私は単なる、「付添い」だった。

ある人を、この方舟に乗船させるために、私はあの工場に招かれていたのだ。方舟の設計など、誰でもよかったのだ。だけど、だれの付添いなのだ。「彼」？　

「主」は私ではなく、次女の「娘婿」を選んだと言うのか。私は、次女夫婦を乗船させるための、手段だったのか。

だが次女夫婦は、「主」のお告げを夢で見ていないと断言している。なぜだ、納得できない。まさか、「彼」自信の意思であの工場に来たのか？　「主」よ、答えて下さい。そうだ、司祭者を起こして問い合わせてみよう。

ああ、息が荒い。頭部のガンが進行している。私の寿命もあとわずかだ。微熱が続く、苦しい。ピイチャンが、足元で吠えている。

　警報機が鳴っている。何だ、何が起きた？　レーダーに、「隕石」が映っている。まさか、衝突するのか。なぜ、今まで気がつかなかった。警報機の音を消していたからだ。

　違う。私が最初に目覚めた理由は、マザー・コンピューターがこの隕石との衝突を避けさせるためだったのだ。放射線の被爆は、二の次だったのだ。一年前から、隕石の軌道は探知されていたのだ。

マザー・コンピューターよ、軌道を外し回避せよ。駄目だ、軌道から外れない。安易に外せば、広大な宇宙の中をさまよってしまう。手動に切り替えよう。ダメだ。

一人では無理だ。全員、起床させないと方舟は動かない。解凍するには、早くても一二時間はかかる。今からでは、もう遅い。間に合わない。

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