ジェネシス(創世記)
地球と火星が誕生して間もない頃、火星は死の星と化していた。生命は存在できなかった。反面、地球は未来に輝いていた。生命がまさに、誕生しようとしていた。

生物が存在しない、荒れ果てた火星に生命を吹き込めるのは、地球の人類だけしかいなかった。

そこで私は、人類に知恵を授ければ、火星に来て生命に満ち溢れさせてくれるであろうと考えた。有能な科学者、指導者を私は求めた。

「神の子」として、原始生命体に知能を与えた。植物に、新たな進化の息吹を与えた。恐竜にも、知能を与えた。そして、類猿人に知能を与えた。

 その後、アトラス人のアダに知恵を授けたが、無駄だった。大陸を沈め、ノエルに希望を託(たく)した。その子孫であるアブーと契約をし、一二士族からさらに優秀なユダ人を選んだ。

しかし戒律が厳しすぎたため、クリストス教を創設した。アブーの長男の子孫、アラム教徒にも期待した。

宗教などどうでもよかった。私に対する信仰心も大切だが、それでも、科学者は現れなかった。

 こうなることは、それ以前の前世の、前世の前世の宇宙の時代から分かっていた。同じ過ちを繰り返したくない。

アカシック・レコードを通じて前世の宇宙での出来事を見せれば、人類の歴史を変えられるだろうと考えた。だが、大幅に歴史を変えることはできなかった。
 

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