ジェネシス(創世記)
宇宙が誕生してから一八0億年も経つと、「父さん」が巨大化した。核融合反応によって水素が減少し、逆にヘリウム(He)が生成され大半を占めるようになった。

中心核は収縮を始め、重力エネルギーは熱に変換され急激に膨張する。「赤色巨星」だ。

 太陽は水星を呑み込み、金星をも呑み込んだ。「兄さん」は辛うじて、免れた。反面、地球は灼熱の大地、不毛の世界となり変わった。海は干上がり、水蒸気が天空を覆い尽くした。当然、生命などもう存在しない。

 一方私の生命たちは、さらに活発化した。太陽が巨大化したために、温暖な気候に恵まれたのだ。動物や植物が繁栄された。

さらに進化が進むと、巨大な恐竜が大地を支配した。重力が弱いため、巨大な生命体の出現は容易でもあった。

その後、類人猿も誕生した。ウイルスが遺伝子を書き換え、脳が発達し、二足歩行ができる人種にまで進化した。

 まて、このサル族には「喉ちんこ」がある。それは将来、言葉を発することができる、知能を備えた人類に進化するということだ。他の動物たちに、「喉ちんこ」はない。

この類人猿には「耳」もある。暗闇でも、凶暴な肉食獣たちに警戒して食料を確保することができる。私は当然、それを拒んだ。抹殺した。

同じ過ちを繰り返したくはない。類人猿はしょせん、「サル」で終わらせた。愚かな人類の誕生を、私は許さない。
 

人類が存在しなくても、私の記憶を司る「契約の箱」など、もう必要ない。火星に生命が誕生した事実だけで、もう「遺伝子」は保存されるのだ。聖書はいらない。

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