ジェネシス(創世記)
宇宙が誕生してから、二00億年以上が過ぎた。今度は、ヘリウムが核融合反応を起こした。「ヘリウム・フラッシュ」だ。炭素や酸素の原子核を作り出した。

太陽はさらに膨張し、とうとう不毛の地球と火星を呑み込んでしまった。私も兄さんも、終に最期を迎えた。

 二00数億年、「父さん」に寿命が訪れる時がきた。太陽は爆発することなく、周囲の残骸の物質を引き寄せては収縮を繰り返し、冷めた「白色矮星」となる。

二五0億年、さらに冷えるとドス黒い炭素の塊、「黒色矮星」と成り果てる。ここにて、太陽の生涯は終えてしまった。

 私は、太陽の熱エネルギーに呑み込まれて、この宇宙空間から消滅する。私の命もこれで終わった…。そうなるはずだった。それは「前世の宇宙」の話であって、「現世の宇宙」では違った。

兄さんの「古(いにしえ)の契約の箱」に記録されている、宇宙の崩壊の仕方が覆されている。記録とは違った、終末の方法だ。

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