ジェネシス(創世記)
暗黒の世界、宇宙空間でたった一つだけ、最強のブラックホールだけが残(のこ)った。そして最後に、自(みずか)らの重力によって押しつぶされた。

自分自身を崩壊させ、一つの点となり、全(すべ)てが消滅するのであった。物質の原子が、陽子と電子に壊(こわ)されて一つの点となる。「ビッグクランチ」、閉(と)じた宇宙の姿(すがた)である。

 もう宇宙には、暗黒の空間しか存在しない。光などない。何もかもが暗黒で、時間も音もない、臭(にお)いも振(しん)動(どう)もない、「完全なる無」の状態(じょうたい)となり尽(つ)くされてしまった。

 それは、いつまで続いたことであろうか。時間の存在しない空間に、それは一秒後、もしくは数百億年後に異変(いへん)が起(お)きたのであろうか。

小さな、小さなミクロの世界、ナノメートル(一0億分の一メートル)以下の「宇宙の種」から、全てが始まった。

もしかすると、「ビッククランチ」とは、「完全なる無」の宇宙ではなかったのかもしれない。

 ブラックホールの向(む)こう側(がわ)の世界、そこには「ホワイトホール」が存在していた。

万物(ばんぶつ)の全(すべ)ての物質を吸収するのがブラックホールであれば、逆(ぎゃく)に全てをあらゆる物質を吐(は)き出(だ)すのが、「ホワイトホール」だ。ブラックホールとホワイトホールは、一つのトンネルのようなものでつながっていた。

 凝縮(ぎょうしゅく)された一つの種から、大爆発が発生(はっせい)した。高温で高密度(こうみつど)の巨大なエネルギーを放(はな)った爆発が、始まった。

宇宙の起源(きげん)、「ビッグバン」だ。封印(ふういん)が開かれた。宇宙の種には、目に見えない「核(かく)」が存在していた。

その遺伝子(いでんし)情報(じょうほう)にもとづいて、宇宙は再生(さいせい)されたのだ。

「光あれ。我(われ)は主(しゅ)なり。主はここにある」

「あなたは万物を造(つく)られ、御心(みこころ)によって万物は存在し、また創造されたからです(ヨハネの黙示録(もくしろく))」

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