ジェネシス(創世記)
イクは、血筋の近い女性リルと結婚した。その二人の間には、双子の息子エウとヤブーが生まれた。惣領(家督を継ぐ嫡子)は当然、長男のエウにある。

けれども次男(庶子。嫡子以外の実子)のヤブーは、年老いた目の不自由なイクを欺いて、その相続権を奪ってしまった。怒ったエウは弟を殺そうとしたが、その前にヤブーは家を離れて逃亡をはかった。

「お前は剣に頼って生きていく。しかしお前は弟に仕える(創世記)」

 ヤブーは、母リルの兄ラン(叔父)の土地で過ごした。「主」は、罪を犯したヤブーを見守っていた。

ヤブーはランの次女ラール(従兄弟)を愛したが、ランは七年間ここで働くことを条件に、結婚を認めさせた。

しかしランはヤブーを騙し、長女のレールに嫁がせた。父を欺いたヤブーが、今度は自分が騙された。因果応報であろう。

 あきらめ切れないヤブーは、再度ラールに結婚を申し込んだ。ランは同じく七年間ここで働けば、今度こそ結婚を認めることを約束した。

その結果、ヤブーは二人の姉妹を妻とすることになった。その後、二人の女性の側室とも結ばれた。

「私の子の香りは、主が祝福された野の香りのようだ(創世記)」

 長女レールとの間には六人の息子と娘、二人の側室には各人二人の息子に恵まれた。
 心から愛すべき次女ラールとの間には、子宝には恵まれなかった。

これも「主」から与えられた試練なのか、それとも自分への罪の深さなのであろうか。数年後、待望の息子が一人生まれた。「ゼフ」と命名した。

「神が私の恥をすすいで下さった(創世記)」


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