ジェネシス(創世記)
数年後、ヤブーが最も愛する妻ラールは、難産のため他界してしまった。そして、ミールが生まれた。

ここにヤブーの子供たちがそろった。ベン、シメン、レレ、ユダ、イサル、ゼルン、ガカ、アスル、ダノン、アフタ、ゼフ、ミール、そして一人娘のディアである。

 歳月が流れた。ヤブーは子供たちの中で、ラールの息子ゼフとミールを最も溺愛した。特に一一番目のゼフは、兄たちよりも生活面や労働時間や家計の財産管理まで任せ、優遇し特別扱いしていた。

 神官たちもラエル人の歴史、科学や医学や商売などの教育を、ゼフに重点を置いて教えていた。ゼフは、学問に対して、だれよりも呑み込みが早かったようだ。

 疎ましく覚えた兄たちは、とかくゼフをいじめた。そのためゼフは、事あるごとに何かと兄たちの行いを父に告げ口をしていた。当然兄たちは、弟ゼフの存在が面白くない。

 ゼフは「夢占い」に秀でていた。多分ゼフは、眠りが浅いのであろう。レム睡眠だ。深く眠る人は、夢を見ることはない。

兄たちと違って、熟睡するタイプではないようだ。もしかすると、ゼフもまた「アカシック・レコード」の波長と合致していたのかもしれない。

 ゼフは、夢で見た出来事を父アブーに話した。「兄たちが将来、自分にひれ伏す」であろうと。さすがのヤブーも、憤りを覚えた。

それは夢ではなく、いじめからくるゼフ自身の強い憎しみと願望なのだと悟った。気をつけないと、いじめだけでは済まされない。

「太陽と月と一一の星が、私にひれ伏す(創世記)」
 
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