ジェネシス(創世記)
明け方、ディーラたちは、馬に騎乗し一気に駆け降りて、パレス人を奇襲攻撃するのであった。この戦術に、パレス人は度肝を抜かれた。

その結果パレス人は、敗退を喫してしまった。この戦いのことを人々は、「鹿ヶ谷の合戦」と名付けた。

「どうして彼の車は遅れているのか。どうして馬のヒヅメの音は遅いのか(士師記)」

 傷を負い、敗走した将軍のラセは、親友へべの天幕に逃げ込んだ。ヘベは不在だったが、その妻ヤルルが将軍ラセを出迎えた。へべはいない。なぜならヤルルが、憎しみを募らせて、夫へべをすでに殺害していたからだ。

 ディーラは以前から、敵であるヤルルと密通を交わしていた。それらの文書は忍者部隊、「くノ一」が届けていた。「くノ一」とは、女性忍者のことだ。

 ヤルルは日夜、夫へべから暴力を奮われていた。ドメスティックバイオレンス(家庭内暴力)だ。将軍ラセもまた、ヤルルに対して暴力行為を楽しんでいた。

特に二人は、ブドウ酒が体内に入ると、その勢いは増した。ヤルルにとって、夫ヘベと将軍ラセは殺意に満ちた憎い相手だったようだ。

 ディーラは、「くノ一」からその情報をいち早く知った。その動機を利用して、ヤルルをラエル人に寝返るように仕向けた。戦争でラエル人が勝利を治めた時、ヤルルの身柄を保護することを条件に、味方として引きいれていたようだ。

 ヤルルは、自らの意志で将軍ラセを殺害してしまった。ディーラはヤルルを利用したつもりではあるが、ヤルル本人(ほんにん)は決(けっ)して、利用されたとは思っていない。

 その結果、この勝利はディーラとヤルルの二人の女性によってもたらされたものと言っても過言ではない。その後ヤルルは、ディーラの側近として職務に就くのであった。

「天幕にいる女たちの中で、最も祝福されるのは彼女(士師記)」

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