sakura -サクラ-
sprout -芽-
01.自転車
───朝8時20分
キーンコーン カーンコーン───
学校中にチャイムの音が鳴り響く。
ガラッ───
まさにその瞬間、私は全力で教室のドアを開けた。
「すみませんっ、遅くなりましたっ!」
「雨音(アマネ)ー、珍しいなーお前が遅刻なんて」
あぁ、やっぱり遅刻なんだ…。
出席簿をぱたんと閉じた寺島先生の言葉に、私はドアに手をついてがっくりと項垂れた。
「いつものお前に免じて見逃してやるから、早く席着けー」
その一言にぱっと顔を上げると、先生は“どうぞ”と言わんばかりに出席簿を私の席に向けて差し出した。
教卓の真ん前の、その席。
私は嬉しさ半分、恥ずかしさ半分で席に着いた。