sakura -サクラ-
席に着いたのを見計らって、先生は白衣のポケットに両手を突っ込んで話し始めた。
「えーっと、んじゃ、全員揃った所でさっきの続きな。これから配るプリントは…」
「……さん、雨音さん」
ん?
先生の声に混じって囁き声がすると思ったら私が呼ばれていたようで、隣を向くとそこには松本君の笑顔があった。
“こ・れ”
口パクでそう言ったらしい松本君は、ノートの切れ端を私の机に置いた。
『遅刻なんてホントに珍しいね。何かあった?』
走り書きとは思えないほど、綺麗で読みやすい字。
お茶目な松本君らしい行動に緩く微笑んで、その切れ端を裏返して返事を書き始める。