sakura -サクラ-



送信ボタンを押して、携帯を閉じた。

それを握ったまま、ベッドに横になる。

ぽすん、と、気の抜ける音がした。



松本理(サトシ)君。

いつも穏やかで大人びている生徒会副会長。

先生からの信頼も厚い、それでいて嫌味もない、男子にも女子にも慕われる優等生。

優しいのは私にだけじゃなくて、誰にでも。

確かに同じクラスになって、しかも席替えをして隣の席になってからよく話すようになったけど……



コンコン───

ガチャ───



「紅兄(クレニイ)、返事する前に開けるのやめてって言ってるでしょ」



ご丁寧にノックはしといて返事も聞かずにドアを開けた不躾な輩は、予想通り兄の紅葉(クレハ)。



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