sakura -サクラ-



「ちっちゃいことーは気にすんな、それ」

「その芸人嫌いだってば」

「何だよーさーちゃんご機嫌斜め?」



しかめっ面でむっくり体を起こすと紅兄は芸人の奇妙な踊りをやめて、腕を組んで背中をドアに預けた。

私より10歳も年上のくせに、この男ほんとにふざけた奴だ。



「紗葉(サヨ)さんがケーキ持ってきてくれたよ」

「うそっ」



聞いた途端バネ仕掛けの勢いで立ち上がり、脱兎の如く駆け出した。

ケーキにつられるなんて我ながらお子様…。

でも!紗葉さんのお店のケーキはどれもほんっとに美味しくて、甘い物好きの私には堪らないんだ。



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