sakura -サクラ-
甘い物大好き家族はケーキの取り合いも必死。
お父さんもお母さんも大人気ないんだから。
「では」
「「いただきます」」
おっきな一口を頬張って、
「美味しいーっ!!」
叫ぶのはいつものこと。
「いつも代わり映えしなくてすみません」
「何言ってるのーケーキだって値上がりしてるご時世なんだから、気を使わなくてもいいのに」
「いいえ、どうせ廃棄になるものなので逆に申し訳ないくらいで」
「いやいや、こうやってしょっちゅう美味いケーキが食べられて嬉しいよ。なぁ咲良」
「うん!」
「それもこれも、ぜーんぶ俺のおかげ」
「何言ってるの、紗葉ちゃんのおかげでしょ!」
ありふれてる、だけどあったかい家族団欒で、私の頭からは今朝の出来事がすっかり抜け落ちてしまっていた───。