sakura -サクラ-



「先生」



声をかけると、やっと私の存在に気づいて顔を上げた。



「おー。悪かったな、会議今終わったんだ」

「今日は部長が休みだったし、あんまり練習になりませんでした」



出席簿と鍵を差し出すと、丁寧に両手で受け取ってくれた。

並んで歩く先生は前を向いたまま僅かに顎を引き、それを片手に持ち直してくすっと笑った。



「そんな日があってもいいさ。雨音は真面目だなー」

「そういうわけでは…」



ないんだけどな。

先生の中での私のイメージって、そんなに真面目一本なの?



「わかってるよ」



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