sakura -サクラ-
わかってる、って?
「ほら、もう帰んな。って、一人か?」
話しながら歩いてるうちに玄関に着いてしまった。
私の方に向き直った先生は、身を屈めて目線の高さを私に合わせる。
「はい。いつも水野さんと帰ってるので」
「うわー一人はまずいよ危ないって」
がしがしと頭を掻きながら身体を起こした先生は、おそらく最近この辺で多発してる変質者騒ぎのことを心配してるんだろう。
「大丈夫ですよ。まだ明るいですし」
「そうは言ってもなー…」
「暗くなる前に走って帰ります」
そう言いながら靴を履き替え、上靴を靴箱にしまった。
「じゃあ先生、さようなら」
「お、おー。気ぃつけてな」
不安げな先生を置いて、私は校舎を出た。