sakura -サクラ-
後ろから呼び止められ、振り返る。
そこにいたのは、あの日私とぶつかったあの人だった。
「あ……」
「俺のこと、覚えてる?」
右側にあの日派手に倒れていた自転車を携え、軽く首を傾げている彼。
覚えてない、わけがない。
「あ、あの……」
「ストップ」
口を開きかけた私を遮って、彼はこう続けた。
「先にひとついいかな」
「は…」
質問しておいて答えを聞かないなんて変な人だと思ったけど、彼の表情があまりにも真剣なので何も言うことが出来ない。
「この間はごめん!!」
またもや返事も聞かずその人は勢いよく頭を下げた。