sakura -サクラ-
「怒って、ない?」
腰はくの字のまま頭を上げて私の表情を窺っているらしい姿は、言っちゃ悪いけどなかなか面白い。
「怒ってませんよ」
「ほんと!?よかったぁ〜」
がばっと身体を起こし、安心したように彼は息を吐いた。
あれくらいで怒るわけないのに。
「それより…」
「じゃあ、俺はこれで!」
「あの!名前…」
「名前?」
自転車にまたがった彼は、先ほどとは打って代わって意地悪そうな笑みを口許に浮かべていた。
「次会う時までに考えといて。ヒントは、“君と同じ”だよ」
「へ?あの、ちょっと!!」
引き留める術もなく、その人は私に背を向けて走り去ってしまった。