sakura -サクラ-
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週が明けて月曜日。
ゴールデンウィークは目の前。
「おはよ、雨音さん」
席に着いた私に声をかけて来た松本君は朝から眼鏡をかけている。
手元には閉じられた文庫本があるから、きっと今まで読んでたんだろう。
「おはよう松本君。何読んでるの?」
「ん?ああ、これ。もうすぐ映画になるやつ」
慣れた手つきでブックカバーを外して、表紙を見せてくれた。
「あっ!それ面白そうだなーって思ってたんだ」
「もうすぐ読み終わるから貸そうか」
そう言って松本君はさっと眼鏡を外してにっこり微笑んだ。