sakura -サクラ-



「…っつってもなぁー、決まってるやつの方が少ないだろ。何となくでもいいからな、とりあえずひとつは書いとけよー」



寺島先生の間延びした口調(口調どころか内容まで間延びしてる)に、逆にこっちが焦りを感じる。



『氏名 雨音咲良(アマネサクラ)

 第一希望 E高校
 第二希望 K高校
 第三希望 なし』



家から近い高校の名前をふたつ書いて、調査書を裏返す。

そこで先ほどの松本君からの手紙を思い出し、続きを書こうとした。

その時、



ぽん

と肩に手を置かれたのと同時に、



「そーゆーのは俺に見つからんようにやれ」



いつの間に後ろへ回ったのか、先生が私の耳元で囁いた。



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