sakura -サクラ-



「好きな人とか、気になる人がいるわけじゃないんでしょ?」



不意にあの人が頭に浮かんだ。

違う。

まさか。

なんでこのタイミングで、あの人のことなんか。

一瞬浮かんだ考えを追い払うように激しく首を振ると、菜緒はどうやら自分の質問の答えと解釈したらしく、



「だったら、ねー?」



とつっこに同意を求めた。

うんうん、と頷くつっこ。



「悪い相手じゃないと思うけど」

「だから違うの!松本君はそんなつもりで誘ってきたんじゃなくて…」

「誘われた!?」



何この誘導尋問。



「たまたま松本君が読んでた本がもうすぐ映画になるねって話になって、一緒に行かない?って…」



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