sakura -サクラ-
ばっと振り返って目が合った先生は、口元を押さえてくっと笑い、教卓へと戻った。
途端に自分の顔が真っ赤になるのを感じた。
「せんせー!」
「何だー、菊池ー」
一番後ろの席、クラス一派手で美人な菊池さんと教壇の上の先生が、教室の端と端で声を大にして会話する。
「『櫂(カイ)先生のお嫁さん』って書いてもいい?」
「おい真理菜!」
と立ち上がって怒ったのは菊池さんの隣の席、彼氏でもあるサッカー部の岡崎君。
「あーそれ見るの俺じゃなくて進路指導の服部先生だから、怒られるのお前だぞー。書いてもいいけどなー」
「おいおいてらしー!!」
岡崎君無視で、頬杖をついて答える先生。
ちぇ〜、とぼやく菊池さんに、立ったまま項垂れる岡崎君。
教室中からどっと笑いが起こる。
このクラスは平和だな…。