sakura -サクラ-
今日の数学は1時間目。
今からやっても絶対間に合わない。
「借りても…いい、かな」
「どうぞ」
ノートを受け取ると、その上に昨日の本が重ねられた。
「読み終わったの?」
「うん。雨音さんも映画見る前に読みたいかと思って」
…それって、私のために急いでくれたってこと?
ダメだ、昨日からおかしいよ。
全部自分に都合良く考えちゃう。
「雨音さん?」
ノートと本を受け取った姿勢のまま固まってる私に、松本君が呼びかける。
私はふるふると首を振ってその考えを打ち消した。
「ありがとう」