sakura -サクラ-



「4月2日生まれなんだね」

「返して下さい、生徒手帳」



私の言葉に、相手は目を丸くした。

そうとしか考えられない。

名前を知られてる時点でもしかしたら…って薄々思ってたけど、誕生日まで言い当てられちゃね。



「バレたかぁ」



今日もお供に自転車を携えて、彼は残念そうな、それでいて嬉しそうな、曖昧な表情を浮かべた。



「返して!」



語気を荒くして訴えると一転して狼狽え始めたその人は、早口で言い訳を並べた。



「ごめん、今日は持ってないんだ。今度持ってくるよ」



言い終えてしゅん、と怒られた犬のように静かになった。



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