sakura -サクラ-
「雨音さん?」
その時、本物の待ち人現る。
私と謎の人、ふたり同時に松本君を振り向いた。
私の名前を呼んだ割りに、松本君の視線は私じゃないもうひとりを捕らえていた。
「あ…、じゃあ俺は、いなくなろっかな」
またね、と、引き留める間もなく彼の自転車は颯爽と走り去って行った。
中途半端に取り残された私は、呆然。
ほんと、なんなの。
意地悪く人のことバカにしてみたり、怒る気なくすくらい萎れてみたり。
とらえどころがなさすぎる。
「雨音さん」
もう一度声をかけられて我に返る。