sakura -サクラ-



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「じゃ、休み明けにまた学校で」



あれから小一時間居座ったCamelia e Farfallaを後にして、“送る”と言ってくれた松本君。

一度は断ったけど、そこはさすが紳士。

きちんと私の家の前まで送ってくれた。



「うん。またね」

「今日はありがとう」

「こちらこそ、ありがとう」



ふたり微笑み合って、松本君は軽く手を上げて背を向けた。

角を曲がるまで小さく手を振りながら、夕陽に照らされる松本君を見送る。

影も見えなくなった瞬間はたと思い出した。



“今日は特別”

その意味を聞くのを忘れた。



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