sakura -サクラ-



……

………

………えぇ!?

松本君、誕生日だったの!?

私“おめでとう”の一言も言ってない。



考えるよりも先に、手が動いた。



RRR───



規則的な呼び出し音が3回鳴って、途切れた。



『…もしもし?』



初めて聞く電話越しの声。

耳がくすぐったい。

なんか顔が、熱い。



「松本君?あ、雨音です」

『うん。びっくりした』



顔は見えないのに、松本君が笑ったのがわかった。



「あのね、今日、誕生日って私知らなくて…」

『そりゃあ言わなかったんだから』



くすくすと、小さな笑い声が耳に響く。



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