sakura -サクラ-
「何だろうな、咲良ちゃんが呼び出しなんて」
不意に隣からかけられた声にどきっと一瞬心臓が反応する。
あまりにも自然に“咲良ちゃん”なんて、呼ばないで。
ちょっとは、動揺してよ。
私ばっかりどきどきしてる。
これってやっぱり…。
「部活のことじゃないかな。わかんないけど」
何でもない風を装って席を立つと、菜緒とつっこのもとへ向かった。
ふたりは席が前後で窓際。
松本君の隣が少しだけ居心地悪い私にとって、格好の避難場所とも言える。
「つっこ、菜緒、昼休み裏庭行かない?」
“裏庭行かない?”は、相談事の合図。
私と菜緒、私とつっこの間で、なんとなく暗黙のルールになっているその合図に、ふたりは笑って頷いた。