sakura -サクラ-



「何だろうな、咲良ちゃんが呼び出しなんて」



不意に隣からかけられた声にどきっと一瞬心臓が反応する。

あまりにも自然に“咲良ちゃん”なんて、呼ばないで。

ちょっとは、動揺してよ。

私ばっかりどきどきしてる。

これってやっぱり…。



「部活のことじゃないかな。わかんないけど」



何でもない風を装って席を立つと、菜緒とつっこのもとへ向かった。

ふたりは席が前後で窓際。

松本君の隣が少しだけ居心地悪い私にとって、格好の避難場所とも言える。



「つっこ、菜緒、昼休み裏庭行かない?」



“裏庭行かない?”は、相談事の合図。

私と菜緒、私とつっこの間で、なんとなく暗黙のルールになっているその合図に、ふたりは笑って頷いた。



< 82 / 83 >

この作品をシェア

pagetop