蝶々結び
少しの沈黙の後、創太の口から聞きたくも無い言葉が飛び出した。


「お前さ……良兄の事、好きなんちゃうんか?」


そう訊いた彼は、弾かれたように顔を上げたあたしの瞳を真っ直ぐ見つめた。


否定……しなきゃっ……!


あたしは上杉先生の教え子で、創太は先生の従兄弟。


「ちゃうんやったら、否定してええねんぞ?」


創太はあたしの顔を覗き込むようにして、小さく笑った。


「あ……」


早く早く……


『違う』って言わなきゃ……


否定しなきゃっ……!


「図星なんか……」


創太はそう呟くと、どこか悲しそうに微笑んだ。


「ちがっ……!違うよっ!!」


「アホ!顔に『そうや』って、書いてるっちゅーねん!」


「お願いっ!!先生にはっ……絶対に言わないでっ……!」


気が付くと、創太の腕を掴んでいた。


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