蝶々結び
上杉先生は困ったように笑うと、ゆっくりと話し始めた。


「創太はさ、チャラい所もあるし、まだまだガキなんだけど……。須藤の事がかなり大切みたいだな……」


相槌を打つ訳でも無く、ただ先生の話に耳を傾けた。


「でも……あいつは笑いながら『振られた』って言ってたから、とりあえずスッキリしてるんだとは思う。ただ、自分のせいで須藤が引きこもったと思ってるから……創太なりにショックだったのかもな……」


「あたし……」


何を言えばいいのか、わからなかった。


逃げた事を創太に謝る……?


だけど、それはあたしの自己満足にしかならないような気がする。


だからと言って、他にどうすればいいのかもわからない。


こんな事を考えた事は、今までに一度も無かったけど…


あたしは、“普通に接する事”の難しさを痛感していた。


< 188 / 494 >

この作品をシェア

pagetop