蝶々結び
あたしの髪が、創太の顔に軽く触れている。


それがくすぐったいのか、彼は眉をしかめながら少しだけ目を開けた。


その瞬間、視線が絡み合う。


思考回路が停止したままのあたしは、不覚にもドキッとしてしまった。


「七星……?」


「お、はよ……」


挨拶なんてしている場合じゃないのに、あたしから出た言葉はこの体勢とは不釣り合いな物だった。


相変わらず、沈黙が続く。


「……うおっ!!!」


程なくして、創太が変な叫び声とともに飛び起き、あたしは彼の体の上から床に滑り落ちた。


「おまっ……!何してんねん!?」


動揺しながら言った創太の顔は真っ赤で、あたしまで顔が熱くなる。


「あっ……!違っ……!」


否定したいのに、あたしの口からは上手く言葉が出て来ない。


心臓の音が、やけに煩かった。


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