蝶々結び
どれくらい経ったのかな……


知らない間に、眠っていたのかもしれない。


机に突っ伏していたあたしは、周りの静けさに気が付いた。


ゆっくりと顔を上げると、バサッと言う音とともに背中から何かが落ちた。


誰の……?


床に落ちた見た事の無いコートを拾って、後ろを見た。


その瞬間、胸がドキドキと高鳴り始め、そして同時に締め付けられるように苦しくもなった。


上杉先生……


一番後ろの窓側の席に座っている上杉先生は、壁にもたれ掛かりながら目を閉じている。


あたしの手の中にあるコートは先生の物なんだと、すぐにわかった。


先生……


寝てるのかな……


どうしよう……


上杉先生に近付く事も、その場から離れる事も出来ない。


どうすればいいのかわからなくて、コートを持ったまま立ち尽くしていた。


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