蝶々結び
だけど、ずっとここにいる訳にはいかない。


あたしは思い切って上杉先生に近付いて、先生の肩にコートをそっと掛けた。


起きないで……


心の中で呟いたのは、表面上だけの気持ち。


ダメだよ……


苦しいよ……


「好き……」


心の中で溢れた想いは、小さな声でポツリと零れ落ちた。


先生……


起きないで……


嘘……


起きて、笑顔を見せてよ……


これ以上、ここにいちゃダメ……


泣きそうになりながら上杉先生の傍から離れ、バッグを持って静かに教室のドアを開けた。


その瞬間…


「須藤?」


あたしの背中に届いたのは、大好きな人の声。


それは、優しくて愛しい声。


それなのに、すごく切ない。


あたしの瞳に涙が溢れて、そっと頬を伝った。


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