蝶々結び
小さく息を吐いて、ゆっくりと振り返った。


すると、あたしの瞳に浮かぶ涙に気付いたらしい上杉先生が、心配そうな表情になった。


「どうした?」


もう一度先生の声を聞いた瞬間、あたしの瞳からまた涙が零れ落ちた。


唇を噛み締めてみても、歯を食い縛ってみても、涙は後から後から溢れて来る。


「どうした?どっか痛いか?」


傍に来た上杉先生は、不安そうな表情で訊きながらあたしの顔を覗き込んだ。


「……が……ぃ……」


「えっ?どうした?」


「……心……が……痛い……」


胸の奥が、ギュッと締め付けられる。


あたしの涙は、益々止まらなくなった。


こんなハズじゃなかったのに……


あたしは、どうしてこんなに弱いの……?


次から次へと溢れ出す涙を止められなくて、声を押し殺して泣いた。


< 286 / 494 >

この作品をシェア

pagetop