蝶々結び
6月の最初の金曜日。


いつものように、上杉先生からの電話を待っていた。


先生の平日の帰宅時間は、あたしが予備校にいる時間で…


学校が休みの土日は、あたしの予備校があったり無かったりするから、予定がハッキリしない。


だから、あたしの予備校が絶対に無い金曜日の夜は、上杉先生が必ず電話を掛けて来てくれる。


先生は、いつも21時頃に電話をくれる。


まだ1時間も待たなければいけない事が、何だかもどかしい。


勉強に身が入らない。


あたしは問題集を見つめながら、何度も携帯を気にしていた。


気分転換にベッドに倒れ込み、時計を見つめてみる。


ため息混じりに携帯を手に取った瞬間、お気に入りの着信音が鳴った。


【上杉先生】


ディスプレイに表示された名前を見た直後、慌てて通話ボタンを押した。


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