蝶々結び
「もしもし……」


弾む心を抑えながら、出来るだけ落ち着いた声で電話に出た。


「あのさ……今から、会えねぇかな?」


「今から、ですか……?」


予想外の言葉に驚きながらも、顔が緩んでいくのがわかる。


「あぁ、家の近くまで迎えに行くから。無理か?」


「いえっ……!一人で大丈夫です!どこに行けばイイですか!?」


喜びを隠せないあたしは、弾んだ声で尋ねた。


「うちのアパートの横に、公園があるだろ?今、そこにいるんだ」


「わかりました!」


あたしは上杉先生の返事も待たずに電話を切り、パーカーを羽織ってリビングに行った。


「ちょっと出掛けて来るね!」


「どこに?」


「コンビニ!」


「気をつけてね」


そう言った母に背中を向けながら頷いて、家を飛び出した。


< 303 / 494 >

この作品をシェア

pagetop