蝶々結び
悔しいハズなのに…


あたしをからかっては楽しそうに笑う上杉先生の事がすごく愛おしくて、いつの間にかあたしからも笑顔が溢れていた。


「お前さ、理想の恋愛ってある?」


「理想の恋愛?」


不意にそんな事を訊かれたあたしは、上杉先生に訊き返しながらも戸惑っていた。


だって、まさか…


観覧車に乗って、一番上の景色が綺麗な所でキスしたいとか…。


夜景の見えるレストランで、プロポーズされたいとか…。


この年になって、そんなベタな恋愛がしたいとは言えない。


夢見る少女じゃあるまいし、恥ずかし過ぎる。


ましてや、初恋でそんなに上手くいく訳がない。


それに、あたしは自分が恋愛出来るなんて思っていなかった。


だから…


あたしにとっては、上杉先生と想いが通じ合えただけでも夢みたいな出来事なのに…。


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