蝶々結び

その夜、上杉先生に電話を掛けた。


不安と緊張で、嫌な汗が出て来るのがわかる。


「七星？」


「先生っ……！」


「うん、わかってる……」


あたしが言葉に詰まると、上杉先生は優しく言った。


噂の事は、先生もすぐに気付いていた。


しかも…


上杉先生は、何人かの生徒からふざけながら真実を尋ねられたりもしていたみたい。


「ちゃんと否定しといたから、七星は何も心配するな！」


「でも……」


「大丈夫だよ！誰が言い出したのか知らねぇけど、あくまでまだ噂だ！下手に何かする方が怪しまれるぞ！」


確かに下手に何か言えば、余計に怪しまれるに決まっている。


「お前は大丈夫か？」


「うん……」


小さく呟いたあたしは、励ましてくれる上杉先生に心配を掛けないように、不安を抑えながら電話を切った。