蝶々結び
優子は勢いよく振り返ると、あたしに抱き着いた。


「優子……?」


呆然としていると、彼女が腕にギュッと力を込めた。


「七星……。ごめっ……!ごめんねっ……!」


「あたしも……ごめん……」


震える声で呟いたあたしの瞳から、一筋の涙が零れ落ちた。


「七星……。早く行って!」


体を離した優子は、涙を浮かべた瞳であたしを見つめた。


「うん……」


「ほら、早く!」


「うん、ありがとう……」


優子に笑顔を向け、教室を後にした。


そして、学校を出てすぐに上杉先生に電話を掛けた。


だけど…


「お掛けになった電話番号は、現在使われて……」


予想もしていなかったその反応に、胸の奥がざわめいた。


先生っ……!


気が付くと、あたしは必死に走っていた。


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