蝶々結び

上杉先生の退職を知らされてから３日後、修学旅行を明日に控えたクラスの皆は浮かれていた。


このタイミングで、修学旅行なんて……


あたしはここ最近の事で頭の中がいっぱいだったからすっかり忘れていたし、何よりもちっとも行く気にはなれなかった。


正直、学校にだって来る気にはなれないけど…


「七星！迎えに来たよ！」


優子がそう言って、毎朝必ず家の前まで迎えに来てくれる。


彼女は電車通学なのにわざわざ学校を通過して家まで迎えに来てくれているから、そんな事をして貰って休む訳にはいかなくて仕方なく学校に来ていた。


家にいても一日中泣いているだけだと思うから、居心地が悪くても学校にいる方がいいのかもしれない。


優子のお陰でクラスの皆にだけは何も言われなくなったから、教室にいれば上杉先生の事を言われたりする事は無かった。