蝶々結び
どう切り出せばいいのかわからなかったあたしは、ずっと黙っている事しか出来なくて…


その事に気まずさを感じているからか、視線も微妙に下を向けてしまう。


創太はいつも通りの口調で他愛のない話をしながら、メニューを見ていた。


それでも、彼だってこの微妙な空気に気付いていなかった訳じゃないと思う。


きっと気まずくならないように気遣かって、いつも通りに振る舞ってくれているだけ…。


そんな雰囲気の中、創太が店員を呼んでカプチーノを注文した。


「創太」


程なくして、ずっと様子を窺っていたらしい上杉先生が、真剣な声で創太を呼んだ。


「ん?」


そう返した創太は、ニカッと笑って見せたけど…


上杉先生が真剣な視線を向けていたからか、彼も真面目な表情になる。


そんな二人の事を黙って見つめていた。


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